大学付属校の実情

大学付属校人気の理由

 ここ数年、大学付属高校の人気が高まっています。その背景には、今後実施される予定の大学入試改革とともに、私立大学に対する「定員厳格化」の影響があります。定員厳格化は地方の活性化のために東京の23区内の私立大学に学生が集中するのを防ぐための政策で、早慶、MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)をはじめとする多くの有名私立大学で合格者が絞り込まれ、2017年、2018年の私立大学入試は非常に厳しいものになりました。そのため、併設大学への進学がある程度保証される付属校の志望者が増えているのです。
 また、近年は「探究型」などと呼ばれる新しいスタイルの学びに注目が集まっています。付属校は受験勉強に時間を取られずにすむため、以前から探究型の学習が進んでいるところが数多くありました。また、併設大学の研究施設や図書館を利用できる、第二外国語をしっかり学べるなど、環境的にも恵まれていることも付属校の魅力といえるでしょう。

大学付属校の実情

 一口に付属校といっても、大部分の生徒が併設大学に進学するところと、他大学進学にも力を入れているところがあります。
 早慶、MARCHなど、著名な総合大学の付属校では、併設大学への内部進学率は総じて高くなっています。その一方で、国公立大学、併設大学にない学部等の条件で、併設大学への推薦権を保持したまま、他大学の受験を認める付属校も増えています。内部進学率が低く、他大学の受験指導に力を入れている高校は、付属校とはいえども実質的には進学校化しているともいえるでしょう。

注意すべき点

 大学付属校を受験の選択肢として考える場合、注意しなければいけないポイントがいくつかあります。

①必ずエスカレーター式に進学できるわけではない
 前出の表の通り、付属校といっても、併設大学に内部進学する割合は学校によって様々です。また、内部進学ができるとしても、それが自分の希望する学部・学科であるとは限りません。場合によっては他大学を受験することになる可能性もあり、その場合は大学付属校であることが有利なのかどうか、慎重に考える必要があります。

②「大学受験がない」=「勉強しなくてよい」ではない
 多くの大学付属校は、大学受験にとらわれない発想で有意義な学習を用意しています。しかし、それらを活かすことができるかどうかは生徒のやる気次第です。付属校から進学した慶応大学出身のある男性は、教育ジャーナリストおおたとしまさ氏の著書の中で「付属校に入ってしまえばもう大学受験の心配がなくて安心という気持ちで入学するのはお勧めできない。その考えこそが付属校での時間を無駄にしてしまう最大の理由だと感じるからだ」と述べていますが、まさにその通りだと思います。

③入試相談(併願優遇)がない高校が多い
 多くの私立高校では入試の際「入試相談」(併願優遇)という仕組みがあり、中3の時点の内申点によって事前に合格の約束を得ることができるため、勉強時間を第一志望(都立高校など)に集中させることができますが、大学付属校の場合、その仕組み自体がない場合があります。特に早慶・MARCHレベルの大学付属校はその傾向が強いようです。この場合、純粋に本番の試験だけで合否が決まるので、しっかりと対策を練って受験勉強しなければなりません。その付属校以外にも受験を考えているのであれば、それだけ負担は大きくなります。勉強時間を十分に確保し、どちらも効果的に勉強できるように学習計画を立てる必要があるでしょう。